えっ……?
 鬼龍院さんを見るとジッと私を見つめながらそう言ってきた。さっきの事とは……?
 戸惑う私に鬼龍院さんは、落ち込みながら口を開いた。

「怖がらせたのならすみません。
 あのショッピングモールは、僕の……鬼龍院組のシマなんです。
いや……正確には、土地が鬼龍院のモノなんです。
 人が集まりやすい分よく喧嘩や揉め事があるので、たまに見回りに来たりしていて。
 そのせいで、つい癖であのような失態を見せてしまいました」

 恥ずかしそうに頬を染めながら困り顔になる鬼龍院さん。
 落ち込んだ姿は、あの怖くクールな雰囲気とは程遠く
謙虚な姿だった。

「あ、いいえ……ちょっと驚きましたが結果危ないところを助けてもらったので嬉しかったです。
ありがとうございました」

 私は、頭を下げてお礼を言った。
かなり驚かされたが助かったのは事実だ。
お陰で酷い喧嘩にならずに済んだ。
 頭を上げると鬼龍院さんは、ちょっと驚いた表情をしながらもニコッと微笑んできた。

それは……天使のように。
 鬼龍院さんの笑顔に胸がキュンとなった。
この人って、どうしてこうなのだろうか。

「やっぱり上紗さんは、僕の理想の人だ。
 僕……こういう家系で生まれたから、どうしても当主として接しないといけなくて。
 そのせいかキレたりすると無意識にやってしまい周りに怖がられるんです。
 だけど上紗さんは、怖からずに接してくれる。
それが凄く嬉しいです」

 ちょっと切なそうに笑う彼の心情に驚いた。
でも驚いたけどヤクザとして生まれたことは、鬼龍院さんにとって大変なことなのだろうと思う。

 そう思うと無理してないといいなぁ……って思った。
私がそう思うことは、変な話だが……。

 その後は、近くのレストランで食事を済ませて何事もなくデートを終わらせた。
 自宅に帰ると部屋に入って行く。
今回のデートも刺激的だった。
 鬼龍院さんのことをまた1つ知ることが出来た。

 あれを無意識にやるのか……。
ちょっと怖かったけど、でも……カッコ良かったかも。
 あ、いやいや。相手は、ヤクザだ!
人前であれだけ騒ぎを起こすのだから人としてどうなんだ?でも……。

自分でもどうしたいのか分からなくなってきた。
 鬼龍院さんのことを考えれば考えるほど、自分の気持ちにモヤモヤする。どうしたいのよ……私は。

 クッションを抱えながらベッドにダイブするとゴロゴロと転がる。
 答えを出せないままだ……。
私は、深いため息を吐くのだった。