「だから喧嘩しないの。
とにかく今日のことは、黙っておくから、もう喧嘩したらダメだからね!?分かった?」
「うるせーな。そんなの分かってるよ」
私が坂下君に注意するとチッと舌打ちをしてきた。
キレながらブツブツ言うと坂下君は、背中を向けて行こうとしてきた。
「ちょっ……坂下君!?
待ちなさい。話は終わってないし頬に傷が……」
慌てて止めようとしたが無視して、そのまま行ってしまった。
もう……相変わらず反抗的なんだから。
まったくとため息を吐いていると鬼龍院さんは、何かを思い出したのか急に慌てだした。
「あぁ……そういえば飲み物。
自分用にコーラを買ったけど振っちゃった」
そう言ってペットボトルのコーラを私に見せてきた。コーラ……?
こんな状況でコーラのことに気づく鬼龍院さんに私は、思わず吹き出してしまった。
ちょっ……こんな時に……。
アハハッと笑う私に鬼龍院さんは、オロオロしていた。
いや……鬼龍院さんったら。マイペースというか、やっぱり天然だ。
笑っていたら怖さとか戸惑いとか馬鹿らしくなっていた。
仕方がないので、近くのコンビニに立ち寄ることにした。
新しいコーラを買い直してコンビニに設置してある休憩スペースの椅子に座った。
向かい側でコーラを飲んでいる鬼龍院さんを見つめる。
やっぱり嘘のように穏やかな姿に戻っていた。
あれは……何だったのかしら?
「上紗さん?どうかなさいましたか?」
鬼龍院さんは、不思議そうにきょとんと首を傾げてきた。
その表情は、天使みたいに可愛らしい。
くっ……可愛い。
何でこんな表情を見せてくるのだろうか。
「あ、いや……何でもありません」
私は、慌てたように買ってきたコーラを飲んだ。
危ない、危ない。可愛いとか、さっきのことは言いにくい……。
すると鬼龍院さんは、しゅんと落ち込みながらペットボトルの蓋を閉めていた。
「もしかして……さっきのことですか?」