「ちょっ……やめなさい坂下君。
 鬼龍院さんに喧嘩を吹っ掛けないの!!
鬼龍院さんが怖がらせちゃうでしょ!?」

 あぁ……もう。こうなると放っておけない。
咄嗟に私は、鬼龍院さんを庇うように前に立ち喧嘩を止めさせた
 完全に怯えているじゃない。

「はぁっ?怖がるってコイツは、ヤクザの親分だろ!?
怖いとか有りえないだろーが!!」

いや……確かにそうなのだが。

「上紗さん……」

 ビクビながら怖がる鬼龍院さんだった。
涙目になっていて、うるうるしていた。
 えっ……いや、あの……どっち!?

 ヤクザの若頭みたいな独特な表情や冷酷なクールさを出したかと思えば
 今は、小動物のような状態になっていた。
私は、どうしたらいいか戸惑ってしまう。
 しかし怖がっている鬼龍院さんを放っておけない。

「坂下君。いい加減にしなさい。
それよりも何故こんなところに居るのよ!?」

 私は、誤魔化すように叱り飛ばした。
そもそも何故……こんなタイミングに遭遇するのよ?
 するとその言葉に一瞬戸惑った表情する坂下君。
頬を赤く染めながら目線を逸らしてきた。

「そ、そんなの買い物に決まっているだろ!!
ここは、ショッピングモールだぞ」

 それは……確かにそうなんだけど。
ここは、ショッピングモールなのだから、いつ生徒が遊びに来ていてもおかしくない。
 いや。しかし……何故こうも悪いタイミングで?

「でも……買い物してないし……」

「はぁっ?うるせーな」

「うぅっ……」

 鬼龍院さんのツッコミにキレる坂下君。
その姿は、やっぱり真逆だった。