「……大丈夫ですか?」
私は、心配そうに声をかけるとハッとしたのか慌てて涙を拭っていた。
「大丈夫。オバケ屋敷って初めて入ったけど
意外と怖くないもんだね」
平気そうに振る舞うが、どう見ても怖がっていたでしょーが!?
まだ手や足が震えていますよ……。
そうツッコミたくなったが、その見栄を張っている姿を見ていたら何だか笑えてきた。
何だか性格が可愛らしい……。
クスッと笑えてきた。ヤクザだからって凄く怖い人や警戒心を持っていたが、こんな人も居るんだ?
不思議……今は、普通に楽しいかも。
「フフっ……お腹が空きませんか?
せっかくだから休憩がてらお昼にしましょう」
私は、気遣い声をかけた。
鬼龍院さんが頷いたので私達は、外で食べることにした。
園内は、持ち込み禁止なので再入場する際は、出る時にチケットに判子を押してもらえば、また入れるらしい。
近くの広場にあるベンチに座ると鬼龍院さんは、カバンからお弁当を取り出していた。
お重になった豪勢なお弁当だった。
凄い……まるで高級な料亭の料理みたいだわ。
「これ……全部。僕の家の料理長が作ったんだ。
元一流ホテルの料理長だった人だから多分口に合うと思う」
「そうなんですか……凄い」
家に一流ホテルの料理長が!?
さすが日本トップのヤクザなだけはあるわね。
感心していると鬼龍院さんは、徐にもう1つ小さなお弁当箱を出してきた。
蓋を開けると型の悪い卵焼きが入っていた。
しかも少し焦げているし……。
「これは……?」
料理長が作ったお重弁当とかなり差があって同じ人が作ったとは思えない……。
不思議に思っていると鬼龍院さんは、頬を染めながら目線を逸らしていた。
「これ……僕が作ったんだ」
……はい?
今、空耳かと思うような単語がでてきたような?気のせいかしら……?
私は、もう一度鬼龍院さんを見た。