ここのオバケ屋敷は、古い病院の造りになっていた。
どうやら幽霊が出る夜間病院の設定らしい。
 懐中電灯を渡されると病院内を進んで行く。
最初にたどり着いたのは、スタッフステーション。

 暗いといっても薄暗いが蛍光灯で光っているし、よくホラー映画にあるような感じだ。
 なんだ……全然思ったより怖くないじゃん。

すると手術室が見えてきた。
 中に入ると手術着を着たマネキンが手術をしている。
医師と看護師の設定なのだろう。凄い……本物みたい。
 私は、ワクワクしながら見ていると突然だった。

手術をされている患者がいきなり起き上がった。
 ゾンビのように青白くお腹の中は、内臓が見えるようになっていた。しかも血だらけ……。

 しかも音声は、悲鳴や怖い声が鳴り響いた。
私は、一瞬ビクッとした。だが、それよりも先に鬼龍院さんが驚いていた。
 「うわぁっ!?」と悲鳴を上げて……。

えっ……?
しかし鬼龍院さんは、それでも私の前に立ってきた。

「だ、大丈夫だ……上沙さん。僕が守るから
鬼龍院組の俺に喧嘩を売るとは、いい度胸しているな」

 庇うように構えていた。
いや……鬼龍院さん。それ作り物ですから!?
 しかも守ると言いながら身体は、ガタガタと震えていた。どう見ても怖いのだろう。

「大丈夫。それ人形ですから、次に行きましょう。ねぇ?」

 壊されても困るので慌てて腕を引っ張り手術中から出て行く。
 次も何人ものゾンビや血だらけの患者などが私達を驚かせにきた。そのたびに鬼龍院さんは……。

「ヒィッ!!」

「うわぁっ!?」

 ビクッと肩や身体を震わせては、声にならない悲鳴を上げていた。
 どう考えても鬼龍院さんは、オバケが苦手みたいだ。
あの日本でもトップクラスの極道・鬼龍院組の若頭なのに……実は、かなりのビビり屋だった。

ヤクザなのに……。
 私は、それに呆れながらもちょっと可愛いと思ってしまった。そして何とか出口まで行けた。
 チラッと隣を見てみると鬼龍院さんは、顔色が真っ青になっており涙目になっていた。