黒江お兄ちゃんは、無理やり私の腕を掴みそう言ってきた。まさかそんな風に想っていたなんて!?
 だからあんなに鬼龍院さんを敵視していたのね。
今さらながら納得した。

 しかしだからと言って私は、別れる気はない。
黒江お兄ちゃんの事は、確かに好きだったけどそれは、昔の話だ。
 私が今、好きなのは……間違いなく鬼龍院さんだ!

「ごめんなさい……それでも私は、あの人が好きなの。
極道とかそんなの関係ない。
葵さんだから私は、好きになったの」

 その言葉に嘘はなかった。
大切にしたいからこの気持ちを譲れない。
 例え昔の恋心でも今と昔は、別物だ。
すると歯を食いしばる黒江お兄ちゃん。

「認めない……そんなの」

 黒江お兄ちゃんは、私の腕を引っ張る。
そして唇にキスをしようとしてきた。うそっ……嫌だ!!
 例え黒江お兄ちゃんでも好きでもない男性にキスをされても嬉しくない。
 私は、嫌だと思った瞬間だった。
スッと長い腕が伸びて私と黒江お兄ちゃんを引き離した。
 その引き離した人物は、鬼龍院さんだった!!

「あ、葵さ……ん!?」

「待たせて悪かったね。上紗。
 君も……俺の可愛い妻に手を出すのは、辞めてもらうか?」

 ギロッと鋭い目付きで鬼龍院さんは、黒江お兄ちゃんを睨み付けた。
 これは、キレた表情だった。
黒江お兄ちゃんは、カッと表情を赤くする。
 だが同じように睨み付けていた。

「何故だ!?こんな極道の奴が君を幸せに出来る訳がないだろ!?お前は、ヤクザだぞ?」

 黒江お兄ちゃんの意見は、もっともだ。
しかしそれでも私は、この人がいい……。
 すると鬼龍院さんは……。

「確かに。俺は、極道だ。それは、紛れもない事実。
でも人を愛するのにヤクザとかカタギは関係ない。
 大切なのは、一緒に困難を乗り越え、それでも一緒に居たいと思える気持ちだ。
 俺は、上紗を愛している。その気持ちに嘘はない」

真っ直ぐと私や黒江お兄ちゃんの前で告げてくれた。
 キレているから大胆な発言だが、それが鬼龍院さんの本音なのだろう。
 私は、その気持ちが嬉しかった……。

「そ、そんな理由が通るか!?
君は、平気なのか?自分の愛する人が危ない目に遭わせることに対して……」

黒江お兄ちゃんの言葉にしゅんと落ち込む鬼龍院さん。