「黒江お兄ちゃん!?えっ……うん。大丈夫。
ただの腹痛だから、あれ?葵さんは?」
「今、薬を買いに行ったよ。腹痛だと聞いて。
ねぇ、それよりも本当に……あの男と今後も結婚を続ける気かい?」
深刻そうな表情で言ってくる黒江お兄ちゃんに私は、動揺する。まだ疑っているようだ。
鬼龍院さんが極道の若頭だからなのか。
「あのね。お兄ちゃん……鬼龍院さんは、本当に素敵な人なの。今だって……」
私は、必死に鬼龍院さんの良さを伝えようとした。
すると何を思ったか黒江お兄ちゃんは、私を強く抱き締めてきた。えっ……?
急に抱き締められるものだから私の心臓は、ドキドキと高鳴ってしまった。
「黒江……お兄ちゃん……?」
「……好きだ。上紗ちゃん」
えっ……?
まさかの告白に私の心臓は、大きく高鳴った。
ずっと昔から憧れていた黒江お兄ちゃんに告白をされるなんて夢にも思わなかったからだ。何で……今さら?
黒江お兄ちゃんは、抱き締めた手を緩めると真っ直ぐと私を見つめてきた。
冗談では言っていないようだ。真剣な眼差しだった。
「俺は、昔から上紗ちゃんのことが好きだった」
「えっ……?でも……そんなこと一言も!?」
黒江お兄ちゃんは、私には一度たりともそんな風には、見せなかった。
優しくて可愛がってくれたけど……その初恋は叶わず伝える前に卒業して海外に留学してしまった。
だから儚い初恋だと想っていたのに……。
「君は、知らなくて当然だよ。俺は、隠していたから
いつも俺に引っ付いてきて可愛くて、その想いが強くなるほど苦しんだ。
年が離れていたし君は、まだ幼い小学生だったからね。
自分は、変じゃないかと思えて……。
現に友人にも通報される前に辞めておけと止められた」
「だけど……諦めきれなくて。君と一緒に居たら俺は、どうにかなりそうで。だから逃げた。
丁度海外に留学する話もあったから……。
でもまた再会して……正直嬉しかったんだ。
なのに……まさか極道の妻になっていたなんて。
そんな危ない世界に嫁がせるために俺は、諦めた訳じゃない!!
すぐに辞めるんだ……危険過ぎる」