ちょっと……黒江お兄ちゃん!?
鬼龍院さんの前に何恥ずかしいことをバラしているのよ!?
 あーんしたとしても幼い頃で1回や2回のことだ。
それだとしょっちゅうしていたことになってしまう。
 その言葉に対して鬼龍院さんの顔が一瞬強張る。

 ま、まずいわ。このままだと変な誤解を生むどころか、鬼龍院さんがキレてしまうかもしれない。
 滅多なことには、キレない鬼龍院さんだが、もし怒らせたら大変な騒ぎになるかもしれない。
 何とか止めないと……。

「あのね……葵さん……」

「あれ?鬼龍院に上紗ちゃんじゃん」

 こ、この声……まさか!?
私は、慌てて振り向くとやっぱり……大河内幸也だった。
 何で、こうも会いたくないのに会うの?
しかも、また違うイケメン君を連れているし。

 他人のふりをしたがったが、思いっきり気づかれてしまったので他人のふりも出来ない。
 大河内幸也は、気にすることなく私達に近づいてきた。

「デートか?それにしては、見ない奴も連れてるな?
ほぅ……なかなかのイケメンだな」

黒江お兄ちゃんを見ながらニヤリと笑った。
 ちょっと……まさか黒江お兄ちゃんに興味を持ったとか言わないでしょーね!?
 大河内幸也は、ゲイだから男性を恋愛対象に見るから困ってしまう。
そうではなくても鬼龍院さんを狙っているのに……。

「えっと……この人は?」

「うん?俺は、大河内幸也だ。
 大河内組の若頭で、そうだなぁ……鬼龍院の愛人とでも言っておこうか?」

「あ、愛人……!?」

 いつから鬼龍院さんがあんたの愛人になったのよ!!
思いがけない言葉に黒江お兄ちゃんは、目を丸くして驚いていた。
 お兄ちゃん……それは誤解だから!!

「ちょっと大河内さん。勝手なことを言わないで下さいよ!!
 あなたは、愛人ではないし、そもそもまだ諦めてないんですか!?」

「諦めるなんて一言も行った覚えはないが?」

「言わなくても普通そうするでしょ!?
私達は、結婚したんだから」