黒江お兄ちゃんは、鬼龍院さんを見るとギロッと睨み付けていた。あれ?
 何だか火花が飛んでいるように見えるのは、気のせいだろうか?
 しかし鬼龍院さんは、構わずにニコりと微笑んでいた。

 と、とりあえず。買い物をしてから素敵なお店でランチをしよう。
 私と鬼龍院さんが仲がいいところを見れば、きっと黒江お兄ちゃんの考えが変わるはずだ!
 近くの商店街に行くことにした。
まずは、女性物のショップで鬼龍院さんに服を選んでもらおう。

「鬼龍……じゃなかった。葵さん。
この服とこの服ならどちらが似合いますか?」

「うーん。どれも素敵だよ!
 上紗さんは、どの服も似合うから両方買うといいよ。何ならこの辺の服全部買う?」

「いや。それは……いいです」

忘れてはいけない。
 鬼龍院さんは、極道の若頭だけではなく、土地やお店などをいくつも経営している資産家だ。
 お店ごと買うことも出来てしまう。
これだと仲良しアピールの前に金持ち自慢になってしまう……。
 違う……私がしたいのは、そういうことではない。

「そうだわ。お腹が空いたからお昼にしましょう。
近くに素敵なお店を見つけたんです!」

 食事を食べながらイチャついていたら仲良しアピールになるはずだわ!!
 そう考えを改め私達は、近くのお店に移動した。
お洒落な店内で料理もリーズナブルで美味しいと評判のイタリアンだ。だが……。

「上紗……これ美味しいよ。食べてみて」

「上紗ちゃん。昔からカルボナーラの方が好きだよね。
俺のもあげよう。ほら、あーん」

「えっ……あの……」

 ニコニコしながら勧めてくる鬼龍院さんとあーんと言いながら食べさせてくれようとする黒江お兄ちゃん。
 私と鬼龍院さんのラブラブなところを見せるはずが、いつの間にか私が板挟みになっていた。

「黒江さんでしたよね?
僕の妻にあーんと言うのは、ちょっと……」

「うん?どうしてだい?
上紗ちゃんには、昔からあーんしてあげてたけど」

「えっ……?」