「あ、あの……」

 鬼龍院さんが私を連れて車の中に入ろうとしたら黒江お兄ちゃんは、慌てて止めてきた。

「……何ですか?」

「あ、いえ……何でもないです。すみません」

 何かを言いかける黒江お兄ちゃんだったが、言葉を止めてしまった。
 何とも複雑そうな表情をしていた。
どうしたのだろうか?
 結局分からず私と鬼龍院さんは、車に乗り込むとそのままその場を後にした。

 車の中で複雑な気持ちになっていると鬼龍院さんは、私の手をギュッて握り締めてきた。
 驚いて見ると切なそうな表情でこちらを見てきた。
その表情にドキッとさせられる。

「あの人……幼馴染みなんだね。
もしかして初恋の人とか?カッコいい人だったし」

「あ、あの……昔のことですから。
 昔に可愛がってもらいましたが、妹のような感じで
今もそんな感じだと思います!!」

 必死に言い訳した。だが言ってから気づいた。
初恋だと否定しなかったことに……。
 いや。初恋なんだけど……誤解されたくないし。
うーんと悩んでいると鬼龍院さんは、クスッと微笑んでくれた。

「大丈夫。僕は、気にしてないから。
今は、僕の奥さんなんだし」

 鬼龍院さん……。
また奥さんだと呼んでくれた。
 気にしないでいいと言われたし、胸がさらにドキドキして落ち着かない。でも嬉しかった。

 私は、頷くと鬼龍院さんと寄り添うように座った。
やっぱり私は、鬼龍院さんのことが好きだ。
 幸せな気持ちになる。
だがしかし黒江お兄ちゃんのことは、それで終わらなかった。

 次の日。いつものように学園に行き奈緒の居る保健室に行くと、そこに黒江お兄ちゃんが居た。
 えっ?何で黒江お兄ちゃんがここに!?
意外な組み合わせに驚いてしまった。

「あ、おはよう。上紗ちゃん。
 たまたま早めに来たら入谷先生にお茶でもどうかと誘われたんだ!」

 奈緒……あんた。
まさか黒江お兄ちゃん狙いとか言わないでしょーね?