「今日から海外の学校から赴任してきました。
黒江真一です。椎名先生と同じ英語担当です。
一緒にやることになりましたので、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると女子生徒達は、キャーキャーと騒ぎだした。
イケメンの黒江お兄ちゃんだから無理もない。
その後も英語の授業をするのだが、さすが海外でやっていただけはある。流暢な英語で分かりやすい。
昔から頭も良く優秀で生徒会長もやっていたわよね。
改めて凄いなぁ……と思った。
そのためか、ますます黒江お兄ちゃんの人気は急上昇中だ。
「へぇ~黒江先生って上紗の幼馴染みなんだ?
それは、また鬼龍院さんも大変ね」
「えっ?何で鬼龍院さんが大変なのよ?」
現在お昼休み中。
廊下で黒江お兄ちゃんが女子生徒達に囲まれてるのを見ていたら奈緒に声をかけられた。
事情を話すと奈緒は、ニヤニヤと笑っていた。
「こんなイケメンで、しかも昔から可愛がってくれた初恋の幼馴染み。
そんなのライバルにしたら最強じゃないのよ?
私が男だったら嫁に関わらせたくないわね」
ライバルにしたら最強。
確かに、こんなハイスペックな幼馴染みは、強敵になるかもしれない。
だがそれは、あくまでもライバルとしたらだ。
私なんかが相手してくれるとは思わない。
なにより私は、既婚者だし……。
「そんな訳ないじゃない。
私は、あくまでも幼馴染みってだけで、お兄ちゃんも私のことなんて何とも思ってないわよ」
「あら。分からないわよ?
もしかしたらってこともあるかもよ」
面白がるようにクスクスと笑う奈緒に若干呆れる。
奈緒ったら……。
私の初恋なんて……すでに終わっているし。
私の中では、黒江お兄ちゃんは、そんな印象だった。
しかしまさか……こんなことになるなんて。
それから授業が無事に終わると帰る準備をしていた。
するとスマホがチカチカと光っているのが見えた。
誰かしら?もしかして!?
慌ててスマホを見てみるとやっぱり鬼龍院さんからのLINEだった。内容は……。
『仕事終わった?帰り一緒に帰ろうと思って裏側の校門で待っている』と書かれていた。
鬼龍院さんが裏側の校門に!?
一緒に帰れるなんて……嬉しい。
私は、慌てて荷物をカバンに詰めると職員室から出て裏側の校門に向かった。
すると居た。黒の高級車が停まっていて鬼龍院さんが立って待っていた。
気づくとニコッと微笑んでくれた。
いつもの天使の笑顔だ。
私は、嬉しくなり走って鬼龍院さんのところに行くと胸元に飛び付いた。