「ざ、雑誌を取り替えてくる」
そう言いながら強引に行こうとした。
頬を赤くさせたまま……。
えぇっ?ちょっと待って取り替えるって……今から!?
まだ何も乗ってもいないのに。
「えっ……今から取り替える気ですか!?
私は、別にいいですよ。それだって十分に楽しめますから!!」
何故だか必死に止めた。
そんな取り替えに行かなくても……。
「……で、でも……」
頬を赤らめて、こちらから見て右目が半分涙目になっていた。ウルウルと今にも泣きそうだ。
その表情は、ヤクザの若頭とは程遠く儚げで
何とも……天使かと思うほど可愛らしかった。
思わず胸がキュンと高鳴り出し恋の弓矢が心臓を撃ち抜かれそうになった。
えっ……何!?その表情……天使?
そんな私を余所に鬼龍院さんは、ギュッと雑誌を両手で抱き締めながら目線を逸らしていた。
目は、まだウルウルと涙目だ。
「……ごめん。僕……こういうところは、初めてで……」
頬を赤く染めながら恥ずかしそうにボソッと呟いた。
えっ?今……初めてって!?
いや、確かに。ヤクザの人が来るとか想像が出来ないけど……。
「は、初めてなんですか……?」
「う、うん。家族と来たことがなくて……。
デートも初めてだし……ごめん」
しゅんと落ち込みだす鬼龍院さんだった。
その姿は、ヤクザの若頭というより気弱な男子生徒を見ているような気分だった。いや……むしろ小動物系?
そうなると教師として職業柄か、またまたお節介の性格のせいか放ってはおけない。
「だ、大丈夫ですって。私がサポートしますから
ほら、私行き慣れているし男性が喜ぶなら女性も嬉しいものですよ。ねぇ?」