「えっ?だってお弁当が入っているし」

お弁当……?
 鬼龍院さんの意外な言葉に一瞬目を丸くした。
えっ?今……何て?

「お弁当……ですか?」

「うん。せっかくだから……」

 いや。せっかくとかそういう問題ではない。
というよりも弁当自体も驚きなんですが……。
 しかもうん……って。

「鬼龍院さん。ここ飲食は、持ち込み禁止ですよ?」

 当たり前なことを呟くと鬼龍院さんは、えっ……?という感じで硬直した。
 その瞬間だった。何だか慌てたようにパンフレットを
広げてチェックしていた。
 そして次にカバンから雑誌らしき物を見ては、交互に確認をし始めた。

「あ、本当だ。そんなぁ……これには、手作り弁当がいいって書いてあったのに……」

 しかもその雑誌をよく見ると女性用のヤツで
“上手くいくためのデート心得特集“と書いてあった。
 上手くいくためのデート心得特集って!?
しかも……それって。

「あの……それって女性用の雑誌ですよ?
 しかもそれだと女性が彼氏に対して喜ばすためのアドバイスしか載ってないと思うのですが……?」

 私は、思わずそうツッコんでしまった。
えっ?もしかして……鬼龍院さんって天然?
 私は、驚いていると鬼龍院さんは、またもやえっ?と表情した後に雑誌をひっくり返した。

 買う時に気づかなかったのかしら?
それとも部下に買わせたとか?

 お互いに言葉を無くす。
すると鬼龍院さんは、カアッと一気に頬を赤くした。
 あれは、夢でも幻でもなかった。
耳まで真っ赤にさせる鬼龍院さん。そして慌てて雑誌をカバンに引っ込める。