「俺は、これでも大河内組の若頭だせ?
しかもこの前のこともある。
行ったとしても警戒されて会わせてくれないだろ?
怪我をしているのならなおさら警戒心も強くなる。
それなら君と一緒の方が何かと都合がいい」と言ってきた。
確かに。1人でも来られても警戒されるのは、当然のことだろう。
いろんな意味で危険過ぎる男なのだ。なるほど……。
「でもお見舞いに……何故?」
「これから口説く予定の男が入院しているのなら
お見舞いに行くのは、当然だろう?」
ま、まだ言っているし!?
この男は、まだ鬼龍院さんを口説くことに諦めていないようだ。しつこい……。
そもそもたくさん相手がいるのだからいいじゃない?
しかもイケメンばかり。
鬼龍院さんに手を出さないでよ!!
「そ、そんなことさせませんから。
それにあんなにイケメンの相手が居るのなら、そちらを大事にしたらいいじゃないですか!
あの人達が可哀想ですよ」
私は、負けじと言い返した。
自分が相手なら絶対に嫌だ。
好きな人には、自分だけを見てほしい……。
「言っただろ?俺は、特定の相手を作らないって。
だが惚れた相手なら全力で大事にしている。
例え複数でも……それで十分だろう」
「そんなのおかしいです。
複数だなんて……そんなの恋愛じゃない」
大河内幸也の考え方に驚いた。
複数もだがそれを良しとしている考え方に。
何で特定の相手を作ろうとしないの?
過去に嫌な思いでもしたのだろうか?
しかし大河内幸也は、運転をしながら静かに笑ってきた。えっ……?
「それは、君の考えだろ?
人には、それぞれ恋愛の定義が違う。価値観が違うように……。
俺は、ゲイだしそれが普通だと思っている。
相手する奴らもそれを理解した上で俺を求めているのなら、それに応えるだけだ。
それが不幸せなのかは、相手が決めればいい……」
彼の言葉にさらに衝撃を受けた。
確かに。恋愛の考え方は、人それぞれだ。
価値観が違うからって否定するのはおかしい……。
彼は、それで満足しているのね。
相手がいいならいいとか私には、分からないけど
それも恋愛の1つ。何だか余計に複雑な気持ちになっていく。
「だから鬼龍院みたいないい男は、一度でも抱いてみたいと思うのは、別におかしくないだろ?
あれはいい……泣き顔なんて最高にそそられる」
いや……やっぱり理解したくない。