「私は、それでもいいと思っているわ。
確かに普通じゃないけど私にとったら、そんな彼も大切だから」
その言葉に嘘はない。
例え危ない奴でも私にとっては大切な人だ。
チラッと坂下君を見ると何とも切なそうな表情をしていた。
まるで傷ついたような表情だった。
坂下君……?私は、驚いてしまう。
「俺は、認めねぇ……絶対認めねぇーからな!!
そんな奴に椎名先生に渡す訳がねぇーだろ。
だって俺は……くっそ~!!」
えっ……?
それ以上に何も言わずに走って行ってしまった。
頬を真っ赤にさせながら……。
ちょっと……一体何だったのだろうか?
唖然としていると奈緒は、コーヒーを飲みながらクスッて笑っていた。
「あと一歩なのに……ざーんねん」
いや。だから何が残念なのよ?しかも嬉しそうに。
坂下君は、何処かに行っちゃうし、まったく意味が分からない。
私は、首を傾げながらもフッと窓から空を眺めた。
鬼龍院さんは……今頃何をしているのかしら?
伊崎組を潰すために準備を始めているのだろうか。
朝まで一緒に居たのに、またすぐに会いたくなるのは、鬼龍院さんのことが好きで溜まらないからだろう。
1ヶ月……遠いな。
私は、そう思いながらため息を吐いた。
それからまだか、まだかと待っていた。
1ヶ月は、待っていると長い。
その間にも世間は、クリスマスシーズンになっていた。
12月になっても鬼龍院さんからの連絡は、来ないままだった。
せめてどうなっているのか教えてくれてもいいのに……。
何の連絡もないと心配になっていた。
授業を終わらせると商店街近くを歩いていた。
この辺にうろついたら鬼龍院さんが現れないかなぁと思ってしまうのは末期かしら。
自宅は、知っているけど……終わるまで会えないと言われているし。
商店街では、クリスマスのイルミネーションや曲が流れていた。
せめてプレゼントでも買おうかな。
もし出会えたら渡せるように……。
でも買うとしたら何がいいかしら?
腕時計とかどうかしら。あ、でも高い時計とかたくさん持っていたわ。うーん。
時計屋さんの前でウロウロしながら見ていた。すると
「あーれ?椎名上紗ちゃんだっけ?
どうしたんだ?こんなところで」と声をかけられた。
えっ……?
振り向くと大河内幸也だった。
ゲッ……何でこんなところに居るのよ!?
よりにもよって会いたくない人に出会ってしまった。
また違う男性を連れているし。
大河内幸也の隣には、イケメン男性が居た。
「そんな嫌な顔をするなよ?仮にもライバルだろ?」
いや。ライバルなら嫌な顔もするでしょう。
しかもライバルだと思いたくない……。