えっ……?
鬼龍院さんを見ると恥ずかしそうに頬を染めていた。
その表情は、健気な天使のようだ。
あぁ……この表情に弱いのよね。
私は、手を出すとギュッと握ってきた。
温かい手だが恥ずかしさで心臓の音が聞かれそうだ。
鬼龍院さんは、嬉しそうに微笑んでいた。
「こんな風に一緒に居られるなんて嬉しい。
僕……初めて上紗さんを意識した日を思い出すよ」
鬼龍院さんの言葉にハッとした。
そういえば彼は、どうして私を好きになったのだろうか?
私にとって彼に会ったのは、お見合いの日だけだ。
もっと前に会った記憶はない……。
パーティーとかで会っていたとしても、これだけ目立つ人だ。記憶に残っているはずだし……?
「鬼龍院さんっていつ私を意識してくれたんですか?」
気になり質問してみた。
すると恥ずかしそうにモゾモゾとし出した。
「僕が上紗さんに会ったのは……いや、見かけたのは、商店街なんです。
たまたま見回りで商店街近くを通ったら上紗さんは、別の男性と居て……ラブホのそばで揉めていました。
嫌がっているようだったので声をかけようとしたら君は、思いっきり平手打ちをしていて。
あの勇ましさとその時に発言した言葉に衝撃を受けました。なんてカッコいい人なんだと……」
……あ、あれか!?
それは、大学時代に合コンで知り合った男性と食事をしたのはいいが、身体の関係を求めてきた。
頭にきて平手打ちをしてしまった……あの黒歴史だわ。
確か……その時に言った台詞は……。
「女が簡単に股を開くと思うな。
あんたが良くてもこっちは、願い下げなんだよ!!
首洗って出直して来い!」だったかしら?
うわぁぁっ……1番聞かれたくない台詞じゃない。
しかも平手打ちまでして……。
むしろ今すぐにでも忘れてほしい黒歴史しかない。
「カッコ良かったなぁ……上紗さん。
僕こんなのだから凛とした女性に憧れるんです。
凛々しくてまさに姐御みたいだった」
うっとりした表情で言う鬼龍院さんに私は、心の中でそれ……意味が違うと思った。
姐御って……それって褒めてるの?と思った。
鬼龍院さんは、やっぱりどこか抜けているというか天然が入っているように感じた。
まさか普通の男性なら気が強いとドン引きされている行動に惹かれるなんて……。
夢にも思わなかった。なんとも不思議だ。
すると鬼龍院さんは、もう一度ギュッと手を強く握ってきた。
「僕……思ったんです。この人ならきっと鬼龍院組を上手く引っ張ってくれるだろうって。
案の定……予想通り部下達は、あなたを慕ってきた。
それは、上紗さん……あなただから出来たことだ!
これからも鬼龍院組のために力を貸して下さい。
そして僕の大切な……」