「……あれ?」


 そこから出たら。
 女の子の姿がなくて。


「……女の子は……?」


 そう言いながら教室内を見渡した。
 けれど、やっぱりいなくて。


「教壇の中から突然、声が聞こえて音がしたから、
 びっくりして逃げて行っちゃったみたいだな」


 ケロッとしてそう言った、南風。


「えっ、どうしよう。
 なんか、とんでもないことをしてしまった……」


 まさか逃げて行ってしまった、なんて。


「気にするな。
 あの子には改めて返事をするから。
 顔も名前も知ってるし。
 一年のとき同じクラスだったから」


 返事……。

 そうだった。
 南風はその女の子から告白されたんだった。


 …………。

 なぜだろう。

 なんか……。

 苦しい……。
 胸の奥が……。


「彩音?」


 ……‼


 自分の世界に入り込んでいたのか。

 南風に名前を呼ばれてハッとした。


「どうした?」


「え……?」


「なんか元気がないみたいだから」


 元気が、ない……?

 そう見える、んだ……。


「そっ……そんなこと……」


「もしかして……」


 そんなことない。

 そう言おうとしたら。

 南風と言葉が被った。


 南風は何を言おうとしているのだろう。

 もしかして、何?