「やっ……やっほー、南風」


 教壇の中に隠れている気まずさ。
 それをごまかそうとした。

 けれど。
 逆に変なテンションになってしまった。


「なんでこんなところに隠れてんだ?」


 不思議そうな顔をしている南風。


 ……ですよね~。

 やっぱり、そう訊きますよね~。


「えっ……えっと……
 忘れ物を取りに来て……」


 それ以上、言葉が続かない。


「それとそこにいるのと何の関係があるんだよ」


 だっ……だよね~。

 そう思うよね~。


「さっ……さぁ。
 何でだろう」


 全然。
 答えになっていない。


 本当は。
 南風たちから身を隠すため。
 そんなこと言えるわけがない。


 どう返答すればいいのか。
 困ってしまって。

 思わず苦笑い。


「『さぁ』って……。
 なんだよそれ」


 南風の言葉に。
 これ以上、何も言えなくて。

 ただただ苦笑い。


「いつまでもそんなところにいないで早く出てこいよ」


 やさしい声のトーンでそう言った、南風。


「うん」


 その声に安心したように、ゆっくりと教壇の中から出る。