「さっきとは違う意味で……
 ……色っぽい……」


 えぇっ⁉


「たっ……太鳳くんっ⁉」


 いっ……色っぽい、って……⁉


 私が今着ている太鳳くんから借りた服は。
 上がTシャツ。
 下は部屋履きのズボン。

 太鳳くんの服だから。
 サイズは大きめだけど。
 特に色っぽさを演出するような要素はどこにもないと思う。


「いっ……色っぽいって……
 Tシャツに部屋履きのズボンを履いているだけだよっ⁉」


 だから、そう言ったのだけど……。


 私の格好を見た太鳳くんの反応は。
 そうとは思えないくらいで。

 濡れた制服を着ていた私を見ていたときと、ほぼ同じ反応をしている。


 そんな太鳳くんのことを見ていると。
 私まで恥ずかしくなってくる。
 そのせいか、顔に熱が集中して熱くなる。


「あっ、彩音、適当に座ってて。
 飲み物、取りに行ってくる」


 そんなとき。
 太鳳くんが少し慌てたような口調でそう言った。


「いっ……いいよ、お気遣いなく」


 私も少しだけ慌てた口調になってしまった。


「気にしないで。
 俺も飲みたいから」


 太鳳くんはそう言って飲み物を取りに行くため部屋を出た。


 太鳳くんの部屋に一人残っている私は、固まったまま座っている状態。

 顔に集中した熱が、なかなか冷めてくれない。



 太鳳くんの部屋に入るのは初めてではない。

 幼少の頃や小学生・中学生の頃、高校生になってからも。
 太鳳くんの部屋で太鳳くんと二人きりになったこともある。


 だけど、その頃は特に意識することもなく太鳳くんと話をしたり勉強を一緒にしたりゲームをしたりしていた。

 物心ついたときには、すでに太鳳くんはいて、兄妹のように過ごしてきた。
 だから太鳳くんのことは、頼りになるお兄ちゃんとして接していた。



 だけど……。
 太鳳くんから……想いを告げられてからは……。

『お兄ちゃん』
 ではなく……。
 一人の『男の人』として見る……意識……するように……。