なにかが額に触れた気がして、紫音はうっすらと目を開けた。相変わらず体中に熱がこもっていて、頭が重い。

「大丈夫か?」

 低い声が耳に届き、紫音は驚きで目を見開いた。

「なん、で?」

 小さく返したものの動揺が全身に広がり混乱を呼ぶ。とっさに夢か現実なのか判断できない。

 どういうわけか、すぐそばで珍しく心配そうな顔をして紫音を見下ろしている凰理の姿があった。

「利都から連絡があったんだ」

 端的な回答があり、紫音は眉根を寄せる。

 利都は……この男を信用しすぎじゃない?

 部屋の中にいるということは、利都に預けているスペアキーを渡されたのだろう。

 いくら親戚設定とはいえ、女性の一人暮らしの部屋に男を寄越すのはどうなのか。

 けれど利都に諸々を許して頼りにしている身としては、文句も言えない。

 利都は自分と同じく、凰理は紫音を異性としてまったく意識していないと思っているのだろう。

 その考えに至り、納得する一方で苦いなにかが染みていく。

 ゆっくり上半身を起こす紫音を、さりげなく凰理が支えた。大きな手がパジャマ越しに触れ、紫音の心臓が跳ね上がる。

「利都に言われたものを一応、買ってきた」

 先ほど送ったメッセージで、ゼリーやスポーツ飲料、レトルトのお粥などを頼んでいた。自分はすぐに行けないだろうから、凰理に頼んだのだろう。

 これからは体調を崩したときのため、あらかじめ買い込んでおこうとひそかに今回の教訓にする。