集中講義はその名の通り、数日間で学期分の単位をもらえるので、ほぼ一日缶詰め状態で受講する。

 さすがに教える側も大変だろうと内心でねぎらいつつ、紫音は真面目にノートをとって講義に臨んだ。

 そして数日間の講義を経て、いよいよ明日が最終日となった。最終日は試験のみで論述式となる。

 講義資料とノートは持ち込み可能なので、紫音にとっては可否ではなくどこまでいい点数をとれるかだ。

 少しだけ勉強したほうがいいかな?

「紫音ちゃん?」

 キャンパス内を歩いていると不意に声がかかり、紫音は声のした方に意識を向けた。

「あっ……」

 そこにはスーツ姿の詩音がいた。先日マンションのエントランスで会ったときとはまた印象が違うが、詩音はにこやかに紫音に近づいてくる。

 どうして彼女がここにいるのか。しかしその質問は先に詩音から投げかけられる。

「今日はサークルかなにか?」

「いえ、集中講義だったんです」

 紫音の答えに詩音は納得した面持ちになった。

「それで夏休み中なのに、学生さんがけっこういるのね。紫音ちゃんもお疲れさま」

「……詩音さんは?」

 やっと紫音が尋ね返す。もしかして言っていた通り凰理に……。

「大学の就職課に用事があってね。ここの卒業生もうちに多く入行してくれているから」

「そうなんですか」

 なぜか詩音の回答に安堵している。続けて「紫音ちゃんもよかったら是非!」と詩音から明るく勧誘され、苦笑した。

 しかし、大学に来ているということは利都や凰理のところに顔を出すのかもしれない。もしくは出した後なのか。