不思議そうな凰理に紫音は真面目に答える。自分をここに付き合わせた理由、借りを返すためには、と考えた結果だ。

 紫音の思考を読んだ凰理は呆れつつきっぱりとした口調で続ける。

「荷物持ちをさせるつもりで連れてきたわけじゃない」

 言いきった後、凰理は荷物を渡す代わりに、紫音の右手を軽く取った。

「それに、俺は自分のものは自分で持つんだ」

 紫音は目を丸くする。そのまま歩を進める凰理に引かれる形で紫音も歩きだした。

 なに? 私も荷物扱い?

 いつもの調子で返そうとするが、声にならない。

「この後、どうする?」

 さらに凰理が先に尋ねてきたので、紫音は手をほどくタイミングを失ってしまった。

「どう?」

「もう昼時だろ」

 たしかに実乃梨ともランチを楽しんでから買い物をする予定だったので、ほどよく空腹感はある。

 とはいえ、これは付き合わないといけない流れなのだろうか。

 デートと呼ぶならここで終わりというのも不自然かもしれない。

「お前の好きなものを言えよ。心配しなくても割り勘なんて野暮な真似はしない」

「そういう話じゃないの」

 眉をひそめたままいい返事をしない紫音に凰理が声をかける。

 でも、なにが楽しくて魔王と食事を? 好きなものって言ったって……。

 そこで紫音はある考えが閃く。目を見開いて凰理をじっと見つめる紫音に凰理は首を傾げた。紫音は繋がれたままの手を引く。

「あ、あのね」