「デートに誘っているんだ」 

 凰理の回答に紫音は大きく目を見開く。そしてふたりの間に沈黙が流れること数秒。

 視線を逸らさないまま紫音が口火を切る。    

「なにを企んでいるの?」

「……お前なぁ」

 紫音の反応を窺っていた凰理がどっと項垂れる。しかし紫音は大真面目だった。

 彼の発言の真意を探ろうとあれこれ考えを巡らせたものの結局わからないので正直に尋ねたらこの有様だ。

 頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

 凰理は前髪をくしゃりと搔き上げた。苦虫を噛みつぶしたような顔も元々の造形が整っているのでそれなりに様になっている。

 本人にはけっして伝えないが。

「お前にとっては、俺もさっきの男と同類か」

 質問というより腑に落ちたという言い方だった。

「そんなことない!」

 しかし意外にも紫音がすぐに否定する。これは凰理にとっても、声を発した紫音本人さえも驚く。

 紫音は一度押し黙り、改めて言葉を紡いでいく。

「それは違う。さっきの彼とは全然違う。だって……」

 元々知り合いだから? 前世の繋がりがあるから?

 続けようとする言葉がいくつか浮かぶのに、どれもしっくりこなくて声に出すのがためらわれる。代わりに違う内容が浮かんだ。

「私、デートってしたことがないからよくわからないんだけれど……」

 そもそもデートって付き合っているカップルとかそういうのが前提の男女がするものじゃないの?