「ああ、彼の師匠にあたる先生と知り合いでね」
内緒話でもするかのような口調で高原は続ける。
「風間先生は若いわりに落ち着いているし、そこがいいところでもあり、勿体ないところでもあるな。怖いもの知らずは、若者の特権だというのに……」
最後はひとり言に近かった。あえて誰もそれ以上は追及せず、課題の話題に戻す。ただひとり、紫音だけは頭の中であれこれ考えていた。
彼にもあるんだろうか。怖いもの……。
『先生にも怖いものってありますか?』
『怖いものがない人間はいないって内容だっただろ』
魔王の怖いものってなに? ちょっと興味あるかも!!
前世の血なのか、記憶なのか。湧き起こる探求心に肩を震わせる。たとえ今は宿敵ではないにしても、凰理の弱点を知っておいて損はないはずだ。
どうやって探ろうかと思考を巡らせていると、遠くで空が呻き声をあげた。急いで窓の外を見ると、朝はあんなに晴れていた空が一転、厚く黒い雲に覆われている。
聞こえたのはおそらく雷だ。
「なんか、雨、降りそうじゃない?」
「ヤバ。これからバイトなのに」
各々の事情が口々にこぼれだす。そのとき四限終了のチャイムが鳴り響き、空模様もあって簡単に今日のまとめを確認し合うと、あとはLINEなどでやりとりする話になった。
さっさと出て行くゼミ生の面々に対し、紫音は高原に確認したいことがありひとり残る。参考文献についてだ。
内緒話でもするかのような口調で高原は続ける。
「風間先生は若いわりに落ち着いているし、そこがいいところでもあり、勿体ないところでもあるな。怖いもの知らずは、若者の特権だというのに……」
最後はひとり言に近かった。あえて誰もそれ以上は追及せず、課題の話題に戻す。ただひとり、紫音だけは頭の中であれこれ考えていた。
彼にもあるんだろうか。怖いもの……。
『先生にも怖いものってありますか?』
『怖いものがない人間はいないって内容だっただろ』
魔王の怖いものってなに? ちょっと興味あるかも!!
前世の血なのか、記憶なのか。湧き起こる探求心に肩を震わせる。たとえ今は宿敵ではないにしても、凰理の弱点を知っておいて損はないはずだ。
どうやって探ろうかと思考を巡らせていると、遠くで空が呻き声をあげた。急いで窓の外を見ると、朝はあんなに晴れていた空が一転、厚く黒い雲に覆われている。
聞こえたのはおそらく雷だ。
「なんか、雨、降りそうじゃない?」
「ヤバ。これからバイトなのに」
各々の事情が口々にこぼれだす。そのとき四限終了のチャイムが鳴り響き、空模様もあって簡単に今日のまとめを確認し合うと、あとはLINEなどでやりとりする話になった。
さっさと出て行くゼミ生の面々に対し、紫音は高原に確認したいことがありひとり残る。参考文献についてだ。