『利都から聞いていないのか?』
聞いていたらこんな状況には、なっていない。凰理は大学に就職が決まったことを利都に告げると、このマンションを紹介されたのだと説明した。つまりは紫音と同じ状況である。
とはいえ、どうしてよりによって隣の部屋になるのか。
『……え、なに? 人の寝首を掻くつもり?』
『お望みなら、そうしてやろうか』
顔を引きつらせ尋ねる紫音に凰理は軽く返してきた。
思えば大学で倒れたとき、凰理は紫音に住所を尋ねもせずこのマンションに送ってきた。あらかじめ利都に紫音のことも聞いていたのなら合点がいく。
それにしても前世は魔王を倒すべく、彼の元へ向かおうと旅に出たというのに今は隣人になるとは。
「やっぱり因縁ってあるのかな?」
「運命と言え、運命と」
ひとり言に訂正が入り、紫音は大きくため息をついた。自分たちの関係は、運命などそんなロマンチックなものではない。
前世では勇者と魔王として敵対していた仲だ。なにが悲しくてそんな相手と今さら“”ご近所さん”をしなくてはならないのか。
「ま、なにか困ったことがあったら遠慮なく言ってこい」
今、この状況に困っているんだけれど?
というのは心の中だけに留めておいた。紫音もここに住まわせてもらっている身なので、凰理のことをとやかく言えない。
ましてや今、憎き魔王とは大学の教員と学生という立場で、表向きは遠縁の親戚ということになっている。
馴れ合うつもりはないが、下手に無視もできない。
エレベーターのボタンを押し、少し距離をあけてふたりで待つ。到着し、さりげなく先に乗り込んだ凰理が扉を開けて紫音が入るのを待つので紫音はおとなしく従った。
聞いていたらこんな状況には、なっていない。凰理は大学に就職が決まったことを利都に告げると、このマンションを紹介されたのだと説明した。つまりは紫音と同じ状況である。
とはいえ、どうしてよりによって隣の部屋になるのか。
『……え、なに? 人の寝首を掻くつもり?』
『お望みなら、そうしてやろうか』
顔を引きつらせ尋ねる紫音に凰理は軽く返してきた。
思えば大学で倒れたとき、凰理は紫音に住所を尋ねもせずこのマンションに送ってきた。あらかじめ利都に紫音のことも聞いていたのなら合点がいく。
それにしても前世は魔王を倒すべく、彼の元へ向かおうと旅に出たというのに今は隣人になるとは。
「やっぱり因縁ってあるのかな?」
「運命と言え、運命と」
ひとり言に訂正が入り、紫音は大きくため息をついた。自分たちの関係は、運命などそんなロマンチックなものではない。
前世では勇者と魔王として敵対していた仲だ。なにが悲しくてそんな相手と今さら“”ご近所さん”をしなくてはならないのか。
「ま、なにか困ったことがあったら遠慮なく言ってこい」
今、この状況に困っているんだけれど?
というのは心の中だけに留めておいた。紫音もここに住まわせてもらっている身なので、凰理のことをとやかく言えない。
ましてや今、憎き魔王とは大学の教員と学生という立場で、表向きは遠縁の親戚ということになっている。
馴れ合うつもりはないが、下手に無視もできない。
エレベーターのボタンを押し、少し距離をあけてふたりで待つ。到着し、さりげなく先に乗り込んだ凰理が扉を開けて紫音が入るのを待つので紫音はおとなしく従った。