毎年恒例、大学のオリエンテーションも新入生ならいざ知らず、三年生になるとただの暇つぶし行事以外他ならない。
けれど根が真面目なのだから神代紫音にサボるという選択肢はなかった。大講義室のうしろの方の席を陣取り、友人の松本実乃梨と並んで座る。
滞りなくオリエンテーションが始まるも、さっきからスマートフォンを弄ってばかりの実乃梨は、まったく話を聞いていない。
ジェルネイルの施された指を画面の上で素早く滑らせている。なら、なんのために参加したのか。
「それがさー。なんか平岡先生の後任の先生、若くてすごくイケメンだって聞いたから、一応チェックしておこうと思って」
なるほど、と紫音は頷く。そういえば紫音と実乃梨が二年生のときにゼミで世話になった平岡教授がそんなことを漏らしていた。
なんでも院卒の新任なので年齢は二十八かそこらだと。たしかに若いというだけで目立つだろう。ただ外見に関しては、どう考えてもおべっかだと思うが、そこまでは口にしない。
紫音は根っからの真面目人間だった。色白の肌に、腰まである黒髪はストレート。目元はくっきりしているが、甘さはなく品のある顔立ちをしている。
ピンク色のブラウスに花柄のシフォンスカートといつも露出を抑えたフェミニン系の服を好む紫音に対し、茶色の髪は常に巻かれ、メイクもファッションも派手なものを選ぶ実乃梨とでは一見合わなさそうに見えるが、ふたりは気の合う仲のいい友人だ。
共に人文社会学部に所属し、歴史学を専攻している。平岡教授はドイツ文化が専門だったが、彼のゼミで学ぶうちに紫音は西洋宗教史に興味を持ち、今年度はその系統の専門の教授のゼミを希望している。
けれど実乃梨に話題にされ、平岡教授の後任者が気になってきた。
「続いては新任教員の紹介です」
進行役の教授の声で紫音と実乃梨の意識はそちらに集中する。呼ばれて部屋の中に入ってきた人物を見て、紫音は息が止まりそうになった。
けれど根が真面目なのだから神代紫音にサボるという選択肢はなかった。大講義室のうしろの方の席を陣取り、友人の松本実乃梨と並んで座る。
滞りなくオリエンテーションが始まるも、さっきからスマートフォンを弄ってばかりの実乃梨は、まったく話を聞いていない。
ジェルネイルの施された指を画面の上で素早く滑らせている。なら、なんのために参加したのか。
「それがさー。なんか平岡先生の後任の先生、若くてすごくイケメンだって聞いたから、一応チェックしておこうと思って」
なるほど、と紫音は頷く。そういえば紫音と実乃梨が二年生のときにゼミで世話になった平岡教授がそんなことを漏らしていた。
なんでも院卒の新任なので年齢は二十八かそこらだと。たしかに若いというだけで目立つだろう。ただ外見に関しては、どう考えてもおべっかだと思うが、そこまでは口にしない。
紫音は根っからの真面目人間だった。色白の肌に、腰まである黒髪はストレート。目元はくっきりしているが、甘さはなく品のある顔立ちをしている。
ピンク色のブラウスに花柄のシフォンスカートといつも露出を抑えたフェミニン系の服を好む紫音に対し、茶色の髪は常に巻かれ、メイクもファッションも派手なものを選ぶ実乃梨とでは一見合わなさそうに見えるが、ふたりは気の合う仲のいい友人だ。
共に人文社会学部に所属し、歴史学を専攻している。平岡教授はドイツ文化が専門だったが、彼のゼミで学ぶうちに紫音は西洋宗教史に興味を持ち、今年度はその系統の専門の教授のゼミを希望している。
けれど実乃梨に話題にされ、平岡教授の後任者が気になってきた。
「続いては新任教員の紹介です」
進行役の教授の声で紫音と実乃梨の意識はそちらに集中する。呼ばれて部屋の中に入ってきた人物を見て、紫音は息が止まりそうになった。