講義室を出て、学食に向かいながら実乃梨は一際明るい声で紫音を励ます。
「ま、でも紫音の気持ち、わかるよ。自分の若い頃を……って今も若いんだけどさ、なんかこう自分でも青かったなぁって思うときのことを知られているのって気恥ずかしいよね」
実乃梨の言葉はいつもどことなく的を射ている気がする。紫音が凰理を意識してしまうのは男装勇者として過ごしていた前世の自分を知っているからだ。
でも、それだけ?
「松本」
「あ、大石じゃん」
実乃梨に声をかけてきたのは彼女と同じサークルの男子学生だった。サークルは三つかけもち、さらにバイトにも精を出している実乃梨の交友関係はかなり広い。
盛り上がるふたりを余所に紫音はぼーっと周囲を見渡す。昼休みになると学食には人が集中するので、こうして少し時間をずらすのは鉄則だ。とりわけ今は四月で、一年生の利用率も高い。
そんな中、ある集団がふと目に留まった。女子学生たちの中に男がひとり。正確には彼を囲んで女子たちが群がっている。スーツを着ているからすぐにわかった。凰理だ。
眼鏡をかけ理知的な雰囲気とは裏腹に人のよさそうな笑顔で学生たちに対応している。
か、確実に魔王シンパが増えてる!?
紫音は愕然とする。昨日の今日であの人だかりはなんなのか。よく見ると美人ばかりだ。彼女たちは目を輝かせ凰理になにかを話しかけている。
デジャヴなのは気のせいだと信じたい。
ちょっと顔がいいからって……みんな、騙されないでー!
内心で叫び、我に返る。今の自分には関係ない話だ。凰理はここの教員になったのだから学生との交流も必要だし仕事の一環だろう。
「ま、でも紫音の気持ち、わかるよ。自分の若い頃を……って今も若いんだけどさ、なんかこう自分でも青かったなぁって思うときのことを知られているのって気恥ずかしいよね」
実乃梨の言葉はいつもどことなく的を射ている気がする。紫音が凰理を意識してしまうのは男装勇者として過ごしていた前世の自分を知っているからだ。
でも、それだけ?
「松本」
「あ、大石じゃん」
実乃梨に声をかけてきたのは彼女と同じサークルの男子学生だった。サークルは三つかけもち、さらにバイトにも精を出している実乃梨の交友関係はかなり広い。
盛り上がるふたりを余所に紫音はぼーっと周囲を見渡す。昼休みになると学食には人が集中するので、こうして少し時間をずらすのは鉄則だ。とりわけ今は四月で、一年生の利用率も高い。
そんな中、ある集団がふと目に留まった。女子学生たちの中に男がひとり。正確には彼を囲んで女子たちが群がっている。スーツを着ているからすぐにわかった。凰理だ。
眼鏡をかけ理知的な雰囲気とは裏腹に人のよさそうな笑顔で学生たちに対応している。
か、確実に魔王シンパが増えてる!?
紫音は愕然とする。昨日の今日であの人だかりはなんなのか。よく見ると美人ばかりだ。彼女たちは目を輝かせ凰理になにかを話しかけている。
デジャヴなのは気のせいだと信じたい。
ちょっと顔がいいからって……みんな、騙されないでー!
内心で叫び、我に返る。今の自分には関係ない話だ。凰理はここの教員になったのだから学生との交流も必要だし仕事の一環だろう。