その後、利都から連絡があり紫音が体調を崩して寝込んでいるから、いくつか差し入れをしてやってほしいと伝えられた。

 詩音はすぐに行ってあげるべきだと告げ、研究室を出ていった。くれぐれも手を出さないようにとの忠告付きだ。

 凰理自身、そこまで節操なしではないと眉をひそめる。

 ちなみに利都からも紫音の部屋のスペアキーを受け取りながら同じごとを言われた。皆、自分をどう思っているのか。

 しかし蓋を開けるとこの有様なので凰理としては、もうなにも言えない。紫音はなんとか眠れたようで規則正しい寝息を立てている。

 凰理は紫音の額にそっと手を置いたが、また熱い。

 まったく。あれほど自分に連絡しろと言ったのに、結局紫音が頼ったのは利都だった。それが凰理の心をザワつかせる。

 おそらくそれも自分でなんとかしようとして、どうにもならないうえでの決断だったに違いない。

 人に頼るのが苦手な紫音のことだ。すべて自分が我慢して、背負い込めばいいと思っているのは昔から変わらない。

「今なら存分に甘やかしてやれる」

 凰理の呟きは誰にも届かず宙に消えた。

 紫音本人はそんなことを望んではいないのではないか。結局、詩音に対しても中途半端な真似をして傷つけてしまった。

 凰理は前髪をくしゃりと掻き、大きくため息をつく。