そして,なぜかいきなり敬語抜き。彼女はきっと,早く俺との距離(きょり)を縮めたかったのだろう。そんなところも俺にはいじらしく感じた。
「――あのさあ。俺達の関係,(まわ)りには秘密にした方がいいよな」
 もしも二人の関係が問題になった時,彼女が傷付くのは()えられなかった。
「うん。でも,日奈には話しといていいかな? 先生と付き合うこと」
「江畑ぁ?」
 俺は思わず,声を上ずらせた。
「大丈夫だよ,先生。日奈は口が(かた)いから,他の人には絶対言わない。日奈のこと信用していいよ」
「うん……,それならいいんじゃね?」
 こういうことには,一人くらい味方になってくれる人間がいた方が,彼女にとってもいいのかもしれないと思った。
「でもね,先生。わたしの病気のこと,クラスの他の子には言わないで?」
「どうしてだ?」
「病気だからかわいそうって思われるのイヤだし。それに,みんなにまで先生みたいなツラい思いはしてほしくないから」