「いや,それは教師として当然のことで……。でも,俺のことそんな風に思っててくれて,ぶっちゃけ(うれ)しいよ。ありがとな」
「いえいえ! ……先生,お願いします。先生じゃないとダメなんです。わたしの,最期の恋かもしれないから」
「最期の恋」なんて。そんな告白,悲しすぎるだろ。……でも,死期を(さと)った彼女の(のぞ)みなら,(かな)えてあげたいと思った。彼女を見捨てることなんて,俺にはできなかった。
「ホントに,俺でいいのか?」
「はい」
 彼女の(すが)るような(まな)()しに,俺は心を決めた。
「分かった。いいよ」
 最期の瞬間まで,俺は彼女の(そば)にいて見届けよう,と。この時に俺を突き動かした力は,多分恋だったんだろうと今なら分かる。
「ありがとう,先生!」
 俺の返事を聞いた瑠花は,今にも嬉し泣きしそうだった。