「……先生,あの。わたしの病気なんですけど」
 瑠花は"おずおず"という感じで口を開いた。
「うん」
「脳に大きな悪性の腫瘍(しゅよう)があるって。主治医の先生ももう手の(ほどこ)しようがないらしくて,余命(よめい)宣告(せんこく)も受けました」
「……えっ!? 余命って……?」
 彼女が打ち明けた病状は,俺が思っていた以上に深刻(しんこく)だった。それはこの時の俺にあまりにも大きすぎるショックを与えた。
「あと半年……いえ,もしかしたらそこまでもたないかも」
「そんな……」
 俺は言葉を失った。教師として,教え子の余命宣告ほどショックなことがあるだろうか?
「でも,今は元気なんだろ?」
「はい……,薬で症状を(おさ)えてるから何とか。でも,その効果もいつまでも続くわけじゃないので」
「……そっか」
 つまり,彼女はこの時すでに,いつ死ぬか分からない状態だったわけだ。それを淡々(たんたん)()げる彼女がとても痛々(いたいた)しかった。