「行ってきます」
挨拶なんかしたって返ってくる事はないが、つい挨拶をしてしまう。
「ただいま」
「おやすみなさい」
「おはよう」
何時だって僕の一人芝居だ。

僕は電車に乗る為駅まで歩いていく。途中コンビニがあるのでそこに寄った。菓子パンを2つ買うとそれを頬張る。一緒に買ったアイスティーで流し込み、簡単な朝食を終えた。駅までは徒歩15分の距離だ。そこからさらに15分間電車に揺られ、目的の学校がある駅に着く。僕にとって学校は勉強を教えてくれる場所だ。それ以下でもなければそれ以上でもない。もし友達を作って友情の大切さを学ぶ場所ならば、僕は落第生だろう。人に期待なんかしないし、期待されたくもない。

でも片一方で夢を見ている自分がいる。

物思いにふけりながら歩いていると駅に着いた。電車が来るまで15分位時間がある。少し早く着きすぎてしまったようだ。僕は鞄の中から小説をとりだして立ちながらそれを読む。昨日読んでいた太宰治の人間失格がまだ読んでいる途中なのだ。人間失格。そもそも人間に合格する為にはどうしたら良いのだろう。地位や名誉ではないだろう。道徳心か?それも違うように思える。太宰治の小説の中では主人公以外皆人間に合格している様だった。太宰治に合ったら聞いてみたい。合格する人間とはどの様な人間なのかを。