「おまたせしました」
軽く頭を下げた彼は、モーニングの皿に目を落とした。
うれしそうに目を細めて見ている。
「美味しそうですね。バターのいい香りだ」
そんな顔をされると油断してしまうじゃないの。と、まんざらでもない気持ちに頬が上がってしまう。
彼は背中を丸くするわけでもなく良い姿勢のまま、フォークではなく箸を選び取り、食べにくい粒コーンもスライスオニオンと一緒に器用に口に運んでいく。
綺麗な食べ方に、ついつい見入ってしまう。
視線に気づいた彼が瞼を上げて、しっかりと目が合ってしまった。
――あ。
苦笑いで誤魔化そうとする自分のほうが、彼よりもよほど怪しくて失礼だろう。
「すみません。お箸の使い方がとてもお上手ですね」
「ありがとうございます。ドレッシング、レモンの風味がさっぱりしてとても美味しいです。手作りですか?」
「ええ」
国産の無農薬のレモンを皮までたっぷりと使ったこだわりのドレッシングだ。自信作を感想付きで褒められるのはうれしい。
「そうですか。じゃあ、このサラダを食べようと思ったら足繁く通うしかないですね」
なんと答えていいのかわからなくて、うやむやに微笑んだ。
皿の上を綺麗に平らげた彼に、コーヒーのお替りを継ぎ足す頃、モーニング目当ての客が入り始め、彼との会話は終わった。
帰り際、会計を済ませながら、「美味しかったです。また来ます」と爽やかな風を残して、彼は店を出た。
本当にまた来るのだろうか。
『僕の運命の人』あの発言は、一体なんだったのだろう。
軽く頭を下げた彼は、モーニングの皿に目を落とした。
うれしそうに目を細めて見ている。
「美味しそうですね。バターのいい香りだ」
そんな顔をされると油断してしまうじゃないの。と、まんざらでもない気持ちに頬が上がってしまう。
彼は背中を丸くするわけでもなく良い姿勢のまま、フォークではなく箸を選び取り、食べにくい粒コーンもスライスオニオンと一緒に器用に口に運んでいく。
綺麗な食べ方に、ついつい見入ってしまう。
視線に気づいた彼が瞼を上げて、しっかりと目が合ってしまった。
――あ。
苦笑いで誤魔化そうとする自分のほうが、彼よりもよほど怪しくて失礼だろう。
「すみません。お箸の使い方がとてもお上手ですね」
「ありがとうございます。ドレッシング、レモンの風味がさっぱりしてとても美味しいです。手作りですか?」
「ええ」
国産の無農薬のレモンを皮までたっぷりと使ったこだわりのドレッシングだ。自信作を感想付きで褒められるのはうれしい。
「そうですか。じゃあ、このサラダを食べようと思ったら足繁く通うしかないですね」
なんと答えていいのかわからなくて、うやむやに微笑んだ。
皿の上を綺麗に平らげた彼に、コーヒーのお替りを継ぎ足す頃、モーニング目当ての客が入り始め、彼との会話は終わった。
帰り際、会計を済ませながら、「美味しかったです。また来ます」と爽やかな風を残して、彼は店を出た。
本当にまた来るのだろうか。
『僕の運命の人』あの発言は、一体なんだったのだろう。