暁が残した手紙の中に、小さな布の袋が入っていた。

中には小さな和紙が一枚。

涙を拭きながら、書かれている文字を見ると、それは筆字で書かれていた。

でも、その文字だけは読めた。
以前暁に教えてもらったことがあったから。

『かたじけない』

それは平安時代のありがとうを意味する言葉。

キーホルダーは銀色の細い月。

小さな布袋に使われた布は、暁の十二単のどこかを切り取ったものだろう。

「かたじけない……」


涙が止まらなかった。

そんなに沢山ありがとうを書かなくていいのに。
むしろお礼を言いたいのは私のほうなんだよ、暁。

ありがとう暁。

この5年間、本当に楽しかった。
5年後、また来てくれることを信じて、私、がんばるからね。

――待ってるね。



*― 終 ―*