清水夫人が襖を開けると、隣の部屋には壁いっぱいの棚があり、資料室のようになっていた。

「うわー、すごいですね」

ふたりが隣の部屋に行くのを見届けと、私は暁の手紙を開いた。
その手紙は筆字ではなく、パソコンで書いて印刷されている。私にも読めるように気を使ったのだろう。


 テイちゃん、こんにちは。
 この手紙をテイちゃんが読んでいる頃、あたしは元の世界に帰っています。
 何度か言おうとしたけれど、やっぱり言えなかった。
 ごめんね。心配かけちゃって。
 よばい星が沢山流れる夜に、あたしはもとの世界に帰る約束になっていました。
 それは陰陽師との約束で、その約束を反故すると命の危険があるというので、仕方なく帰ります。

 この世界。とても楽しかった。
 テイちゃんがいてくれたおかげで、本当に幸せな五年間を過ごすことができました。ありがとう。
 本当にありがとう。

 正直言うと、テイちゃんが定子さまの生まれ変わりなのか、一条定さんが帝の生まれ変わりかなんてことは、凡人のあたしにはわかりません。
 あはは。ごめんなさい。
 でも、テイちゃんが幸せを掴んでくれそうなので、安心しました。

 ありがとう。
 テイちゃんの幸せこそが、あたしの幸せです。

 また陰陽師に頼み込んで五年後、よばい星の夜に来ます。
 どれだけテイちゃんが幸せになっているか、そのことを考えると楽しみで仕方がありません。

 テイちゃん、ありがとう。
 本当にありがとう。

 お土産の京都で買ったキーホルダー入れておきました。
 またね。
            暁 】