彼は弾けたように白い歯を見せて笑った。

言っていることは十分イカれているのに、言っている本人があまりにも爽やかなので、混乱してしまう。

まさかと思うがこれは愛の告白と受け取ったほうがいいのだろうか?
いやいや、そんな馬鹿な。

危ない危ないと気を落ち着かせながら、近所のスナックのママに教えてもらった魔法の言葉で笑って見せた。

「あはは。お客さまったら、お上手ですね」
ほんとうにもぅ、困りますよぉ。


おかしな客というのは、時々いる。
プレゼントですと突然花を差出してきたり、帰り際に携帯電話の番号を書いた名刺を置いていったりなど。実際防犯ベルを鳴らしたことはないけれど。

基本的に私ひとりで店にいる。
ランチタイムの11時から午後二時までの三時間は、近所のカナちゃんがアルバイトに来てくれるが、それ以外は夕方六時までずっとひとりだ。

とはいえ今朝ももうすぐ常連さんの誰かが入ってくるだろう。
気を取り直してモーニングのプレートにサラダを盛り付け始めた。

ホステスのような私の返しをどう思ったのか、彼は穏やかに微笑んだだけで大人しく座っている。
時間まで待ってからトーストを焼こうと思ったけれど、早くお引き取り願いたいので、トースターにパンをセットする。


――僕の運命の人。

冗談にしてもなかなか言えないセリフだと思うのに、そんなセリフが似合うのがまたちょっと困る。