「そういえば、どうして平安時代に興味を持ったの?」

彼の書くファンタジーは平安時代のものばかりだ。

「うーん。なぜかな。あ、そうそう高校時代の同級生に、陰陽師っていうあだ名の同級生がいて、実際彼の家はその昔代々陰陽師だったらしんだけど」

「え? すごい。本物の陰陽師の知り合いなんて」

「いまは華道家の家元なんだけどね。なんていうか、ちょっと不思議な奴でね。そいつが言ったんだ。『君は過去世の記憶を無くしてしまったのか』って」

「なにそれ、ものすごく意味深」

「だろう? それで、どういう意味か聞いたんだけど。『それはつまらないな。僕はちゃんと覚えている』ってそれきり」

「えー、その人は前世の記憶があるってこと?」

「どうだろう。彼はなにも教えてくれないんだ。そもそも陰陽師って何? って興味をもったあたりからが始まりかな」

そんな話をしながら、途中でお昼を食べて、暁の家に着いた時には午後の一時だった。

もし、本当に旅行に行っていて暁も両親もいないとしても、本物の清水暁さんがいるはずだ。
その本物の暁さんを彼になんて紹介したらいいのかわからない。答えはでないが、ここまで来たのだからなるようになれという思いで、そのまま門戸についているインターホンを押した。

ピンポンという音の後に、「はい」という声が聞こえた。
暁が母さまと呼ぶ人の声だった。

「あの、藤原定子ですが……」