泊った夜、暁は清水家の両親と旅行に出かけると言った。

『この時代のことを色々見てみたいと思ってね。母さまの仕事の都合がついたら連れて行ってくれるって言ってたの。まずは京都に行ってみる』

私も行きたいと言うと、暁は笑ってバッグの中から取り出したチケットを見せてくれた。

『見てほら、新幹線のチケット。父さま母さまと三人で行くんだよ? 本物の暁さんは仕事があるからお留守番。一度乗ってみたかったんだよねー。新幹線』


暁が新幹線に乗った写真を送ってくれたあの日から、二週間が経った。

駅弁を手で掲げるように持って笑う暁。
京都駅に到着したという報告。

最初の頃はまめに連絡を取り合った。
私からは変わらずにメッセージを送り続けていたけれど、日を追う毎に暁の返事をくれる回数は減り、今度ハガキを送るよというメッセージを最後に、彼女はSNSから消えた。

流星が沢山見えるのは今日の夜なのに――。


「暁さんからハガキは、届いた?」

「ううん。まだなの」

原田に掴まれた手首の痛みはもうとっくに治っているけれど、一ノ瀬さんは相変わらず店に来る。

店内ではお客さまだけれど、店を出れば優しい恋人だ。

情緒不安定になった理由は満月ではなかったらしく、暁が旅行に出かけたと知るとますます私は寂しさに襲われた。

私はすっかり忘れていたことを思い出したのである。