「テイちゃんいた。よかったー。明日休みだからさ、飲もうと思って来ちゃったよ。テイちゃんにさっきメッセージ送ったのに、返事ないんだもん」

「あっ! ごめんごめん」

一ノ瀬さんと修兄さんが顔を合わせることで頭が一杯で、スマートホンを見ることすら忘れていた。
慌てて見ていると、しっかり暁からメッセージと電話と両方入っている。

「暁、定子が世話になったな。今日は俺の驕りだ、好きなだけ飲んでいいぞ」
「やったー。修さん、ありがとう」

私も少しだけ修兄さんの手伝いをしながら、暁と並んでカウンターに腰を下ろした。

「そういえば、こうして飲むのは久しぶりだね。私、明日はお店休みだし、家に泊まっていってよ」
「うれしー。そうする」

私が住んでいるマンションは、ここから歩いて五分のところにある。大学を卒業して私が一人暮らしを始めたばかりの頃は、暁はまだ清水家に住んでいたこともあって、ちょこちょこ泊りに来た。
出版社に就職が決まってひとり暮らしを始めてからは少しずつその回数は減っていったけれど、いまでもクローゼットには暁の着替えが何着か置いてある。

「じゃあ、今日は久しぶりに思い切り飲んじゃおうかな」
「うんうん。はい、乾杯」

祖父が亡くなって、本格的に私が店を始めてからは、朝が早い私を気遣ってか、暁もあまりお酒を飲むことはなかった。夜こうして店に来ても、食事をするだけで帰る。