お客さまが誰もいなくなって、ホッと一息ついていた時、約束よりも早く彼は現れた。


「どうですか？　痛みは？」

「ありがとうございます。まだ少し痛みますけど、随分いいです。ハンバーグ、本当に助かりました。完売でしたよ」

「それはよかった。沢山残ったらどうしようって、ちょっと不安で」
少し照れたように彼は首を傾げる。

その仕草がやけに胸をくすぐって、心の中で叫んだ。
――ひぇー、か、かわいい！
私よりも４歳年上だというのに可愛いだなんて失礼だろうとは思うけど、でもキュンとハートがうずく。

そんな彼に胸をときめかせるのは私だけじゃない。
その後やってきた常連の奥さま方も、彼を見逃さなかった。
「あら、サダちゃんその方は？」と、大きな声で聞いてくる。

「私が手を痛めちゃって、少しの間お手伝いして頂くことになったんですよー」

デザートセットを配りにいった彼を、早速質問攻めにしている。
一体なにを聞いているのやら。
どうせ二人はどういう関係なの？とか、彼を困らせているのだろう。笑い声が弾ける度に、気が気じゃない私の口からはため息が出る。