「サダちゃん、本当に大丈夫なの? 無理しないで言ってね? 私、もう少し勤務時間増やそうか?」
ランチ時のアルバイト、ミコさんが心配そうに顔を歪める。彼女はご近所に住む主婦で、とても気が利く優しい人だ。でも忙しい人なので甘えてはいけない。
「ありがとう。でも大丈夫。1週間だけ知人が手伝ってくれることになったの」
「それならよかった。悪化させたら大変だもの」
――知人。
友達ではないし、知人という以外に、私と彼の関係を表す言葉はないだろう。
知りあってまだ数日だけれど、やはり彼は怪しい人ではなかった。
彼が本当に一条定であることは間違いないし、それを証明してくれたのは暁だ。
昨夜、興奮気味に電話があった。
『よかった! ほんとによかったね、テイちゃん』
妙に気を利かせた暁は、ドラッグストアで湿布を買ってきてくれたあと、さっさと帰ってしまったのである。
『良かったって、何が?』
『あのお方がテイちゃんを迎えに来てくださった。私はもう涙が止まらないよ』
『ちょっと暁、やめてよ。考え過ぎだってば』
そう言っても彼女の耳には届かなかったらしい。
良かったと繰り返しながら、暁は本当に泣いていた。