次の日の朝になっても、手首は痛かった。

痣もまだ完全には消えていなくて、思っていたよりも酷かったらしい。病院に行くほどではないけれど、これではやはり仕事には支障がでただろう。

「原田めー、小心者のくせに」

どこかで見かけたら、絶対に苦情を言ってやる。ブツブツと文句を言いながら湿布を貼り直した。
この湿布は、昨日、あれから暁が薬局に走って買ってきてくれたものだ。

暁も一ノ瀬さんも病院に言って診断書をもらっておいた方がいいと言ってくれたけれど、私は行かなかった。

原田のためじゃない。原田のお母さんのためだ。
子供の頃から原田のおばさまには可愛がってもらっている。『深雪』にもお友達と一緒によく来てくれる常連さまで、大黒柱の父を早くに亡くした我が家をいつも気にかけてくれる優しいおばさまなのだ。
おばさまを悲しませるほうが、手首の痛みよりも辛い。

それに、普通にしている分にはそれほど痛くはなかった。
何かを持つとか、力を入れたりすると痛いので、これではランチタイムの仕込みをするのは辛かったと思うけれど、ありがたいことにその心配もない。

昨日、一ノ瀬さんは今日のランチ分の仕込みをしましょうと言って、煮込みハンバーグを作ってくれたのだ。