「手首、少し休めたほうがいいでしょうから。それに僕はこれでも一応社会人になるまでずっと空手を習っていましたから戦力にはなれると思います」

「いやでも、お忙しいでしょうし、そんな」

だいの大人が時給千円で3時間アルバイトなどありえないだろうに。しかも彼は有名作家だ。忙しくないはずがない。

それなのに、なぜか彼は困った様子も見せない。

「カウンターの中からお客さまを迎えるってなんかいいですね。僕がバイトをしたカフェはカウンターとかなかったので」

「良かったね!」
「いやいや、そういう訳には」

「では、こうしましょう。一週間だけ。一週間もすれば、あなたの手の痛みも消えるでしょうから」
そう言われては、これ以上固辞するのも気が引ける。

「本当にいいのですか?」

「はい。もちろん」

暁はキャハとうれしそうな声を上げて、万歳と両手をあげた。