「僕がやりますよ、あなたはこちらへ来てください」
そう言って彼が立ち上がった。
「学生の時、カフェでバイトをしたことがありますから」
思わず暁と目を合わせ、頷く暁に促されたように、私はカウンターから出た。
そのまま入口ドアに向かって、CLOSEDの札を下げる。
今日はもうお客さまを迎える余裕はない。
暁は、濡れたおしぼりで、赤くなった手首を冷やしてくれた。
「ごめんねテイちゃん。あたしがコンビニに行ったばっかりに」
「あはは、何言ってるの? 暁のせいじゃないよ? それにこれくらい大丈夫よ」
眉を下げて半ベソをかく暁の肩を、左手でぎゅっと抱きしめる。
こんな時の暁は子供のようだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。一ノ瀬さんはお好きなコーヒーいれてくださいね」
一条定はペンネームで、彼の本名は一ノ瀬統。
「暁、こちら一ノ瀬さん」
「こんにちは」
「一ノ瀬さん、こちら親友の暁です」
暁は意味有りげに足でトントンと、私の足を叩く。
私はそれに答えるように同じように暁の足を叩いた。
――そうだよ、暁。この人が例の小説家一条定。
「こんにちは。一ノ瀬です」
にっこりと微笑んだ彼は、「では、遠慮なく」と、コーヒー豆が入った瓶を手にとる。
そう言って彼が立ち上がった。
「学生の時、カフェでバイトをしたことがありますから」
思わず暁と目を合わせ、頷く暁に促されたように、私はカウンターから出た。
そのまま入口ドアに向かって、CLOSEDの札を下げる。
今日はもうお客さまを迎える余裕はない。
暁は、濡れたおしぼりで、赤くなった手首を冷やしてくれた。
「ごめんねテイちゃん。あたしがコンビニに行ったばっかりに」
「あはは、何言ってるの? 暁のせいじゃないよ? それにこれくらい大丈夫よ」
眉を下げて半ベソをかく暁の肩を、左手でぎゅっと抱きしめる。
こんな時の暁は子供のようだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。一ノ瀬さんはお好きなコーヒーいれてくださいね」
一条定はペンネームで、彼の本名は一ノ瀬統。
「暁、こちら一ノ瀬さん」
「こんにちは」
「一ノ瀬さん、こちら親友の暁です」
暁は意味有りげに足でトントンと、私の足を叩く。
私はそれに答えるように同じように暁の足を叩いた。
――そうだよ、暁。この人が例の小説家一条定。
「こんにちは。一ノ瀬です」
にっこりと微笑んだ彼は、「では、遠慮なく」と、コーヒー豆が入った瓶を手にとる。