「相変わらずかたいねぇ。じゃあ何が出せるんだよ」
「コーヒーです」
「ふぅん。じゃあ、それ」
男の名前は川田。
もうすぐ40歳になるだろう川田は、この先のビルをいくつか所有する金持ちの息子で、定職にもつかずプラプラしている。
こんなふうに時々店に現れては、しつこく絡んでくるのだ。
「サダちゃん。今度さー、どこか飲みに行こうよ」
また始まったと思いながら、私は「ごめんなさい」と肩をすくめる。
「冷たいなぁ。いいだろう?たまには付き合ったって」
面倒なので無視をしたまま、コーヒーを出した。
「おい。返事くらいしろよ」
カップから離れた私の手を川田が掴む。男の力で思い切り握られると、こんなに痛いのか。
「ちょっと! やめて!」
手首を掴む手に、更に力が入る。
「痛っ」
恐怖と共に足が震えた。
口では今までもしつこくされたことがあるが、こんな風に手を出されたことはなかった。
まさかカウンターを乗り越えてくるとは思えないが、手を離したあとのことを考えるのも怖い。
「防犯カメラあるからね!」
「はぁ? 客を無視しといて何なんだその態度は、馬鹿にしてんのか?!」
「離して!」
ああ、まずい。カウンターテーブル下の防犯ベルを押すには数センチ手が届かない。必死に手を伸ばそうとしたその時だった。
ドアベルの音がした。
「テイちゃん!」
暁が血相を変えて入ってきた。
「ちょっとあんた! なにやってんの?!」
「コーヒーです」
「ふぅん。じゃあ、それ」
男の名前は川田。
もうすぐ40歳になるだろう川田は、この先のビルをいくつか所有する金持ちの息子で、定職にもつかずプラプラしている。
こんなふうに時々店に現れては、しつこく絡んでくるのだ。
「サダちゃん。今度さー、どこか飲みに行こうよ」
また始まったと思いながら、私は「ごめんなさい」と肩をすくめる。
「冷たいなぁ。いいだろう?たまには付き合ったって」
面倒なので無視をしたまま、コーヒーを出した。
「おい。返事くらいしろよ」
カップから離れた私の手を川田が掴む。男の力で思い切り握られると、こんなに痛いのか。
「ちょっと! やめて!」
手首を掴む手に、更に力が入る。
「痛っ」
恐怖と共に足が震えた。
口では今までもしつこくされたことがあるが、こんな風に手を出されたことはなかった。
まさかカウンターを乗り越えてくるとは思えないが、手を離したあとのことを考えるのも怖い。
「防犯カメラあるからね!」
「はぁ? 客を無視しといて何なんだその態度は、馬鹿にしてんのか?!」
「離して!」
ああ、まずい。カウンターテーブル下の防犯ベルを押すには数センチ手が届かない。必死に手を伸ばそうとしたその時だった。
ドアベルの音がした。
「テイちゃん!」
暁が血相を変えて入ってきた。
「ちょっとあんた! なにやってんの?!」