平日の四時頃は暇だ。
この時間に来る常連さんは滅多にいない。
アフタヌーンの気晴らしに来る奥さま方は、ぼちぼち夕ご飯のメニューが気になり始めて家に帰るし、休憩中の営業マンは重い腰を上げて最後のひと踏ん張りと席を立つ。
次に店が混み合うのは、修兄さんが現れるバーの時間になってから。
後片付けも終わり、明日の材料の確認もして、やるべきことを終えたこの時は、私にとって小休止の時間。
自分のためのコーヒータイムだ。
彼が来なければの話だが――。
サイフォンでコーヒーをいれていると、カランカランとベルのドア音がした。
振り返った入口にいたのはやはり彼。
「いらっしゃいませ」
にっこりと微笑みを浮かべた彼は、少し遠慮がちにカウンターに腰を下ろした。
「ホットコーヒーをひとつ、お願いします」
「はい」
謎のイケメンである彼が、初めて現れたあの日から今日で三日。
その間、彼は毎日来店している。
モーニングに来たのは初日だけで、昨日も、この時間に現れた。
『本当はモーニングを食べに来たいんですけどね』と言っていた。
彼の仕事はなんなのだろう。
この時間に現れることができる職業ってなに?
昨日はたまたま他のお客さまがカウンターにいて、挨拶程度の言葉以外は交わせなかった。
でも今日は、彼の他には誰もいない。
少しくらい話はできるかも?
――あれ? もしかして私、期待してる?