「ええ?」

「テイちゃんってさ、本当に優しいし、自分がどんなに辛い時でもいつも周りを思いやっている。他にも色々、テイシさまによく似ている。以上。異論は受け付けない」

「もぉ」

「納得した?」

私が左右に首を振ると、暁は溜め息をつきながらトーストにかぶりついた。

「私、そんなに思いやりなんてないもん」

暁は、思い込みから買いかぶり過ぎているのだ。

「わかってないなぁ。この店はいつも常連さんでいっぱいでしょう? それはテイちゃんの人柄なの」

違うよ、暁。
常連さん達はみんな、私を子供の頃から知っているから、私を心配してくれているからなんだよ。
私が人を集めているわけじゃない。私は周り優しい人達に助けられているだけだ。

暁が愛してやまないテイシさまは、そうではないだろう。テイシさま照らす側の人。自身の温かい光で暁を包み込んだように。

テイシさまは兄の失態によって宮中を追われ、ボロ屋に行くことになった時も、みんなを励まして笑っていたという。

私ならきっと泣いて過ごしたに違いない。

そんなことを思う私をチラリと見た暁は、あきれたように大きく息を吐いた。

「わかってないなぁ。やれやれ」と呟きながら。