一条帝とテイシさまの話をする時、暁は決まって泣いてしまうのだ。

涙ながらに語る彼女の影響で、私もいまではまるで自分が体験したことのような気がして、悲しくなってくるのである。

「はいコーヒー。モーニングはご馳走するね。ブドウ頂いたお礼」
「ありがとー」

今日の暁は、就職活動の学生のような紺色のスーツを着ている。
清少納言がスーツを着てこれから出勤するというのだから、ちょっと笑ってしまう。

暁が働いているのは小さな出版社だが、歴史関係に特化しているところらしい。
『陰陽師の晴明殿とか違うんだけど、証拠がないからしょーがない』などと文句をいいながら、暁は嬉々として働いている。

働くと聞いた時は正直驚いた。
親代わりの清水の人々がその出版社を紹介してくれたというが、まさか本当に、就職までするとは。

彼女の行動力には驚かされるが、考えてみれば自ら陰陽師に頼み込んでタイムリープしてきたのだ。
就職する不安を気にするくらいなら、ここにはいないだろう。


「暁、今日は何時出勤なの?」

「9時半だよぉ」
ということはまだおしゃべりする余裕がある。

「暁さ、どうして私がテイシさまの生まれ変わりかもなんて思ったの?」

「え、なに? いよいよ自覚してきた?」