感情豊かで、私が笑うとすごく喜び、私がほんの少しでも元気がないと心配そうにくっついてまわる。
思いやりに溢れる優しい暁。
私たちは、たちまちのうちに親友になった。


あれは初めて彼女の自宅に遊びに行った時のことだ。

彼女の父親は歴史学者、母親は考古学者だと聞いていたので、一体どんな家なのかと私は興味津々で出掛けた。

予想通り屋敷は純日本家屋。

紹介されたのは暁の両親だけではなくて、それまで聞いたことはない暁によく似た女の子がいた。

『彼女が本当の清水暁さんだよ』と暁は言った。
『暁さんは家にいることが好きなんだって』

『こんにちは。本物の清水暁です』とその女の子は笑う。

本物の清水暁さんの部屋は二次元のキャラクターグッズに溢れていて、紹介されたその時も、直前までパソコンに向かっていたらしい。聞けば乙女ゲームのキャラクターデザイナーだという。

『忙しくて大学に行けない時に、代わりにあたしが行かせてもらっていたの』

ということは、私の親友である暁は誰なのか。

意味がわからなくて混乱したまま、見てほしい物があると言われて次に通されたのは和室。

そこには、衣桁(いこう)に掛けられた着物があった。
その着物は何層にも重っていて、華やかな柄の外側の着物とは違い、内側の衣はそれぞれが一色でグラデーションのように濃淡がついている。

『十二単?』