突如光の中から現れた謎の男。一緒に現れた〈高位存在〉と名乗る柔和なイケメンによれば、この人はあの葛飾北斎らしい。
「あ、そうだ。アルティオレムって、フォーティチュード・ジーニアスの運営会社だ」
藍佳は、タイトル画面の直前に表示される企業ロゴを思い出した。てことは、あの人は運営の営業か何かの人?? じゃあこの人は……?
「やっぱワケわかんない」
このおじさん、よく見るとさっき更新された新ガシャの目玉と同じ服装をしている。緋色の着流しに黒いレザーの羽織。さっきちらりと見えた裏地の金色はたぶんドクロだろう。顔の骨格や髪型も言われてみればカツシカホクサイに似てないこともない。
しかしながら……三次元で見るとだいぶキツい格好だ。このコスプレおじさん、見た感じ五十歳くらい? 二次元のキャラクターだと好みド真ん中の年齢だけど、目の前にいる痛いオヤジには何の感慨も抱かなかった。
『それじゃあ、後はよろしくお願いしますね』
そんな無責任な言葉を残して、あのイケメンは立ち去ってしまった。残された男は、ボリボリと頭をかきながら藍佳の部屋を見回している。
「うん? こりゃあ……」
コスプレおじさんは、ソファの前のローテーブルに放り出してある紙束に目を留めた。やばい!? 藍佳の心臓が止まる。
「まってそれは!?」
慌てて男の手から取り上げようとするが、ひらりとかわされる。
「ほほーう、こりゃあ枕絵じゃねえか!」
最悪だ……。それは昨日の夜、練習で描いたクロッキーだ。内容は…………男女の営みである。
林田藍佳は同人作家だ。ペンネームは[からすみうるて]。個人サークル[ワラスボ・ラボ]として主に男性向け18禁漫画を描いている。作家としては中堅の少し上といったところで、ツイッターのフォロワー数は8千。もちろんその全員が、リアルで藍佳と何の関わりもない人たちだ。林田藍佳としての日常に[からすみうるて]は持ち込んでいない。持ち込んではいけない。
なのに、練習で描いたえっち絵を見られてしまった……それも自分と倍近く歳が離れてそうなコスプレおじさんに……。もう死だ……死ぬしかない。
「こりゃ……大ェしたもんだ……!」
「……え?」
「あ、そうだ。アルティオレムって、フォーティチュード・ジーニアスの運営会社だ」
藍佳は、タイトル画面の直前に表示される企業ロゴを思い出した。てことは、あの人は運営の営業か何かの人?? じゃあこの人は……?
「やっぱワケわかんない」
このおじさん、よく見るとさっき更新された新ガシャの目玉と同じ服装をしている。緋色の着流しに黒いレザーの羽織。さっきちらりと見えた裏地の金色はたぶんドクロだろう。顔の骨格や髪型も言われてみればカツシカホクサイに似てないこともない。
しかしながら……三次元で見るとだいぶキツい格好だ。このコスプレおじさん、見た感じ五十歳くらい? 二次元のキャラクターだと好みド真ん中の年齢だけど、目の前にいる痛いオヤジには何の感慨も抱かなかった。
『それじゃあ、後はよろしくお願いしますね』
そんな無責任な言葉を残して、あのイケメンは立ち去ってしまった。残された男は、ボリボリと頭をかきながら藍佳の部屋を見回している。
「うん? こりゃあ……」
コスプレおじさんは、ソファの前のローテーブルに放り出してある紙束に目を留めた。やばい!? 藍佳の心臓が止まる。
「まってそれは!?」
慌てて男の手から取り上げようとするが、ひらりとかわされる。
「ほほーう、こりゃあ枕絵じゃねえか!」
最悪だ……。それは昨日の夜、練習で描いたクロッキーだ。内容は…………男女の営みである。
林田藍佳は同人作家だ。ペンネームは[からすみうるて]。個人サークル[ワラスボ・ラボ]として主に男性向け18禁漫画を描いている。作家としては中堅の少し上といったところで、ツイッターのフォロワー数は8千。もちろんその全員が、リアルで藍佳と何の関わりもない人たちだ。林田藍佳としての日常に[からすみうるて]は持ち込んでいない。持ち込んではいけない。
なのに、練習で描いたえっち絵を見られてしまった……それも自分と倍近く歳が離れてそうなコスプレおじさんに……。もう死だ……死ぬしかない。
「こりゃ……大ェしたもんだ……!」
「……え?」